2010年06月20日

This is who you are



え〜、僕が一押ししてる映画「パブリック・エネミーズ」ですが、これには色々と理由がございまして、基本的にこの金融業界が巻き起こした不況の最中に同じく恐慌の最中に銀行強盗がヒーローの映画が封切られるってのが映画業界を通じて「さすが!」と唸ってしまうくらいいい企画だったんですね。

ただ、このジョン・デリンジャーという男を主題にした映画といいますと70年代くらいに作られてるんですが正直面白くなくて(間違いなく子供の頃観たんだけど内容覚えてない)、おかげでジェシー・ジェームズやビリー・ザ・キッドみたいに何本も「デリンジャーもの」が作られなかったという悲しいいきさつがあるものですから不安はありましたけどね。

ただ、先に作られた作品がショボかったら後発でも本家を名乗れる可能性というのはあるわけなんすね。「暴力脱獄」ってポール・ニューマンの映画はフランスの「大人はわかってくれない」って映画のコンセプトいただいてて(確認してもらったらわかるけど「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」もこれからいただいてます)先発があまりにも有名だったんでみんなそっち(先発)しか覚えてないというようなことはないわけです。

さて、この「パブリック〜」は内容がすばらしいので間違いなくその後「デリンジャーもの」の本家を名乗れるであろう内容になっとります。

これ、他の映画評論のブログでも書いてる人いたんですが、とにかく「空間、空気」をきっちり描いてて、主人公がある場所では普通の人、でも他の場所ではアウトロー、その違いは何なのか?それはその場の持つ磁場(比喩的な表現ばっかりですいません)によるものであることが観客にすぐにわかるように描かれてる。荘厳なほどキレイで広くて天井が高い銀行のロビーでは日陰の人間には居場所がない、だから強盗する、ついでに天井に向かってマシンガンぶっ放す。人気の無い夜の海岸では愛しい恋人になるために岩場に身を隠す、はたまた刺客に命を狙われたらまるで分厚い壁が迫ってくるかのように周囲の壁をバックに必ず映す。(関係ないけど僕が映画観てバックの風景覚えてることは滅多に無いことです)

まぁ、この手法で「銀行強盗→犯罪者→いやぁねぇ」となる短絡思考を観客に起こさせないようにしてるわけっすね。デリンジャーと仲間たちの行動の理由がバックに映し出される風景を見ればすぐにわかる、というか普通に感情移入できるのです。

んで、追っ手のメルビン・パービス役のクリスチャン・ベールさんはですね、物語の後半で「ダークナイト」におけるバットマンと同様に「自分が何者なのか」がわかってしまって・・・というか自分についた「役」(はい、ここで前回と話がつながるわけですよ)が判明してアイデンティティが崩壊します。(そして同時にデリンジャーの恋人ビリーは自身のネイティブ・アメリカンのアイデンティティを固持してもしなくても同じ運命に苦しむことを自覚します)

そして、ジョニデ扮するデリンジャーはですね、これは史実としてあまりにも有名なんですが映画館から出てきたところを狙撃されますが、この映画の中ではデリンジャーがあるいは大悪党と糾弾されたりあるいは英雄として愛されたりしてどうもはっきりしなかった自分の「役」をこの映画館で映画観てる時にスクリーンの中の登場人物に感情移入して気づくんですね。そしてこの先の運命にも気づいてしまいます。

「ダークナイト」を評価する人間って「パブリック・エネミーズ」を評価しない人ばっかですが、古くさいテーマを現代に通用させるために編み出した手法は、どういうわけか一緒なんですね。こういう芸術論というほどでもないけれど、まぁこういうこと覚えておいた方が映画が楽しく見れるかな?という部分に言及してくださる「お金を貰って物を書く評論家のセンセェ」が日本に皆無というのは目を覆いたくなる現実でありまして、知性や教養と無縁の人生を送るワタクシがこんなことを書いて発表するというのはやはりワタクシに何らかの「役」が憑いて書かしているということなのではないでしょうか?

(言及するもしないも観てない映画にケチつけるという映画評論業界に古くからある悪習が未だ残ってるのを嘆くべきでしょう)
posted by fabrice du monde chien at 01:10| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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